その日から、真美とようせいウイリーとの生活がはじまりました。はじめ真美はウイリーにとまどっていたけれど、いっしょに生活して行くうちに、ウイリーとの毎日がとても楽しくなりました。
ウイリーは、明るくて前向きな性格。
真美は、暗くて後ろ向きな性格。
まるで正反対の性格だけれど、二人はとても仲が良かったのです。真美はウイリーになら、何でも話すことができました。真美にとってウイリーは、たった一人の友達になっていたのでした。
そんなある日、ウイリーが真美に聞きました。
「ねえ、真美。真美はどうして学校で笑わないの? 」
真美は、少し困った顔をして質問にこたえました。
「だって、皆んなは、私とはちがうんだもの。皆んな、パパやママのじまん話をするのよ。私のパパは、ママとケンカして出て行っちゃったし…ママは仕事ばかりでかまってくれないし…。だから私、パパやママのじまん話をする皆んなが大嫌いなの!・・・」
「そうなんだ・・・、でも真美、真美のママだってじまんのママじゃない。いっしょうけんめい働いて、真美を学校に行かせてくれているんだから・・・。真美も皆んなの前で、ママのじまん話をすればいいんだよ!・・・。」
真美は、何もいい返すことができませんでした。
学校のチューリップの花はもう散ってしまったのに、真美のチューリップの花はきれいに咲きつづけています。まるでウイリーに守られているかのように・・・。
ウイリーはある日、真美にもうひとつの質問をしました。
「真美は、どうして今までウソをついたの? 」
それは聞いてほしくない、でも聞いてほしい質問でした。
「真美が悪い子だったら、パパが・・・パパとママが・・・心配してくれると思って・・・私がさみしいってことに気づいてくれて、パパとママと3人で、また暮らせるようになったらと思って・・・。」
真美は、小さな声でそう答えました。
「やはりそうだったんだ。真美はパパに帰ってほしくて、悪い子のふりをしていたんだね。真美が本気で悪いことをするはずないもね・・・。でも真美、この世の中にはね、悪いことをすると悪いことが起こり、良いことをすると良いことが起きる、という決まりがあるんだよ。心当たりないかい? 」
真美は、ハッと気づきました。
“そういえば、ウソをつくようになってから、悪いことばかりが起きている。たとえば、ママに買ってもらった大切なペンがこわれたり、パパにプレゼントしてもらった大事なスケッチブックがなくなったり、かぜをひいたり、転んでけがをしたり・・・。”
真美は急におそろしくなりました。そして泣きそうな顔になって、ウイリーにいいました。
「スケッチブックは、パパからの大事なプレゼントだったの。私がウソをつくから、なくなってしまったの? 」
そんな真美に、ウイリーはやさしくいいました。
「そうだよ真美、でも心配しなくていいんだよ。もう、ウソをつきませんって自分の心に約束したら、悪いことは起きなくなるから・・・。もしかしたら、なくなったスケッチブックも見つかるかもしれないよ!」
「自分の心に約束したらいいの?・・・」
「そうさ、自分の心に約束したらいいのさ・・。」