“チューリップさん、今までより、 もっともっと、お世話をしてあげるからね。そうしたら、きっと、きっと…”
そうつぶやきながら、いそいで家に帰ってきた真美は、はち植えを見ておどろきました。今朝まで、あんなに固く冷たい感じのつぼみが、今にも咲きそうになっているのです。真美は、はち植えそっとに顔を近づけました。
ふくらみかけたつぼみの中に、やわらかい光がみえます。
「なにかしら?」 真美がつぼみをのぞきこんだそのとき、まばゆい光がつぼみの中からあふれ出たかと思うと、パアーッと部屋全体に広がったのでした。
「きゃっ!」
思わず目をつむった真美でしたが、しばらくしてソーっと目を開けると、そこには美しいチューリップの花が咲いていました。
「お花…、咲いたわ! 」
真美はおどろきのあまり、そう口にするのがやっとでした。
でもおどろいたのは、それだけではありませんでした。
「こんにちは、はじめまして。真美! 」
どこからともなく、そんな声が聞こえてきたのです。
“え? お花がしゃべった?”
真美は目をパチクリしながら、花の回りを見ましたが、何も見つかりません。
「お口があるのかしら? 」
とそのとき、“うふふ! ”という笑い声が、真美の背中のほうからきこえてきたのです。
振り返った真美は、信じられないものを目にしました。
なんと、羽根の生えたかわいいようせいが机の上に腰を掛け、ほほ笑みながら真美のほうを見ているのです。
「よ、ようせい!?」
真美は、自分の目をうたぐりました。
「そう、僕はようせい。ウイリーっていうんだ。よろしくね! 」
ようせいは、机の上からふわりと浮かびあがり、うれしそうに真美の周りをひらりひらりと飛び回ると、「ああ、良かった! もしかしたら出てこられないかと思った。つぼみの中って、とてもきゅうくつだからね・・・。ね、ちょっと手を出して」といいました。
おそるおそる出した手の平の上に、ようせいはそっとすわりました。
「ど、どうしてようせいがこんなところにいるの?・・・ どうして急に花が咲いたの?・・・ 」
真美は、ようせいにたずねました。
「あのね、花が咲いたのは、真美が先生に勇気をもってあやまったからだよ! よく聞いてちょうだいね。僕がここに来たのは、真美に悪いところをなおしてもらいたかったからなんだ・・・。真美はね…」
ウイリーは、
暗い顔をすること
ウソをつくこと
など…真美の悪いところを注意するのでした。
でも真美は、ウイリーに注意されてもいやな気がしませんでした。ウイリーは、私のことを思って注意してくれているのだから・・・。いわれてみれば、世の中には、パパのいない子も、ママのいない子も、ふたりともいない子だっている。でも、皆んな頑張って明るく生きている。それを知りながら、悪い子だった自分がはずかしかったのです。