ある日真美は、職員室によばれました。
原口先生は真美の目を見つめながら、やさしく話しかけました。
「真美ちゃん! お花係のとき、あなたにチュウリップのきゅうこん10個わたしたわね? 」
真美はどきっとしました。やっぱり、お家に持って帰ったことがばれたんだわ。
「でも、花だんには9個のチューリップしか咲いてないのよ・・・」
先生は、悲しそうな目で真美を見つめながらそういいました。
“どうしよう! なにかいい訳しなきゃ・・・正直に盗んだことを話そうか?・・・" でも真美の口から出てきたのは、「私・・10個全部花だんに植えました。」というウソでした。
「だったら、なぜ9個しか咲いていないのかしらね?・・・」
先生は首を傾げながらそういいます。
もう真美の心臓はドキドキ、顔は真っ赤になっています。
"この子、またウソをついているわ! でも、はっきりした証拠もないし・・・どうしよう・・・" 先生は困ってしまいました。
しばらくして先生はいいました。
「そうね・・・もしかしたら、きゅうこんがくさってしまたのかもしれないわね・・・ありがとう! 帰っていいわよ!・・・」先生は、それいじょう追求しようとしませんでした。
職員室から出てきた真美は、今にも息がつまりそうでした。今までウソはついたけれど、こんなに心が痛むウソは初めてだったからです。
真美はその夜、ふしぎな夢をみました。夢の中でチュウリップのつぼみが、こんなことをいうのです。"咲きたいの! でも、盗まれたきゅうこんは咲くことができないの・・・! このままだと、つぼみのまま枯れてしまうかもしれないわ! 真美ちゃん、助けてちょうだい! "
真美は、うなされるように目を覚ましました。もう汗びっしょりです。真美は、はち植えにかけよると、チュウリップのつぼみに話しかけました。
「チュウリップさん、ごめんなさい!・・・悪かったわ! 私・・あなたを盗んだことを、 明日先生にあやまりに行きます。だから枯れないで、きれいに咲いてちょうだい! 」
真美はチュウリップにあやまると、明日先生に盗んだことを正直に話そうと心に決めたのでした。
よく日学校に行くと、真美はさっそく原口先生の所にあやまりに行きました。
「先生ごめんなさい! わたしチューリップのきゅうこんを盗みました。本当に悪かったと思っています! でも、どうしてもあのチューリップが欲しかったんです。どうしても、あのチューリップの花の咲くのが見たかったんです。」
真美の目から、ボロボロと涙がこぼれ落ちました。
思いもよらない真美の行動に、先生はおどろきました。
“なぜかしら。何かが起きて、この子の中の何かが変わったわ!? ”
先生は、真美の頭をやさしくなでると、涙にぬれた真美の目をのぞきこみながらこういいました。
「真美ちゃん! あなたは勇気のある子よ。正直に話してくれて、ほんとうに先生うれしいわ! 」
先生は続けました。
「では、こうしましょう。正直に話してくれたごほうびに、チューリップの花が咲き終わるまでという約束で、きゅうこんをお貸しします。でも咲き終わったら、先生にきゅうこんを返してね!・・・」
そんな原口先生の言葉に、真美は、うれしくて、うれしくて、「はい!」と元気よく返事していました。