とうとうチューリップの花の絵が書きあがりました。
これまでチューリップの花の絵は何度も書いたことがあるけれど、今までで一番うまく書けたと真美は思いました。
絵にまんぞくした真美は、安心してウトウトと眠ってしまいました。
そんな真美は、ウイリーの夢を見ました。
「真美、今日までありがとう。あのね…、僕ずっとだまっていたけど。チューリップの花が咲き終わったら、僕は真美とお別れしなきゃならないんだ。でも約束して。ぜったいに泣かないって。だって僕は見えなくても、ずっとずっと真美のそばにいるんだから・・・。
それに、もう一つ約束してほしいことがあるんだ・・・。真美は良い子だから、ぜったい自分のことを悪く思わないこと。明るく、朗らかに、元気で暮らしてほしいんだ・・・。これは約束だよ!・・・。」
そういうと、ウイリーは消えていきました。
「ウイリー! ウイリー! 行かないで! 」
真美は、自分の声で目をさましました。
「今の夢!? 本当に!・・・」
真美はあわてて飛び起きると、机の上のはち植えにかけよりました。
「あっ!」
真美の目に入ってきたのは、すでにかれて散ったチューリップの花でした。
「ウイリー! ウイリー! 」
いくら呼んでもウイリーは顔を見せません。昨日まで呼んだらすぐに顔を見せたウイリーは、もういませんでした。
でも真美は、泣きませんでした。
夢でウイリーがいっていたように、真美のそばにウイリーがいるような気がしたからです。
“私はひとりじゃないんだ! ” そう思い、ふとチューリップの絵を見ると、絵の中のウイリーの笑顔が自分の笑顔と重なって見えました。
しばらく見つめていると、絵が光っているように見えました。"…あれ? これって、涙? やっぱり、泣いちゃったのかな…。"真美は、ほほをつたう涙をぬぐいながら、クスクスと笑うのでした。
次の日。
真美は約束どおり、先生にきゅうこんを返しに行きました。
その後。
真美のもとに、とてもいい知らせが届きました。
真美のところに、パパが帰ってくることになったのです。
真美が心から願っていた、パパとママと3人で暮らす夢がかなったのでした。真美が良い子になったから…。
ウイリーとのふしぎな出会い・・、ふしぎなできごと・・、短い間だったけれど、大人になっても忘れることのできないふしぎな体験・・・。
でもこれは夢ではありません。 だって目には見えないけれど、ウイリーはいつだって真美といっしょにいるのだから・・・。
=== おしまい ===