ウイリーに送り出されて、真美は由美さんの家に向かいました。
あまり好きじゃない由美さん、どうお礼をいったらいいだろう?
不安な気持ちを押さえ、真美は玄関のチャイムを押しました。
「ピポン! ピポン!」 と、いきおいよくチャイムがなり、しばらくしたあと、ガチャリとドアが開きました。
「あら…」
由美さんでした。
「あの…」
どういったらいいのだろう?ーーー"パパ、ママ、勇気をください! "
真美は、スケッチブックをぎゅっと抱きしめると、
「あの…このスケッチブック…届けてくれてありがとう!」
と、小さな声だったけれど、勇気を出してお礼をいいました。
「ちゃんと、届いたのね。よかった…」
由美さんは、うれしそうにいいました。
「真美さんって、とても絵がうまいのね。あっ!…かってに中を見ちゃってごめんなさい。でも、誰のスケッチブックかわからなかったから…
私も、絵が大好きなの・・・ 私・・・私・・勇気がなくていいだせなかったけど・・・真美さん、私のお友達になってくれない…!?」
由美さんは小さな声で、はずかしそうにそういいました。
"そうだったんだ! 私のことをジロジロ見るのは、友達になりたかったからなんだ! スケッチブックを届けてくれただけでもすごくうれしかったのに、友達にまでなってくれるなんて! "真美は急にうれしくなり、
「ええ、ええ、よろこんで! 私の方こそお願いね! 」
と、こうふんぎみに返事していました。
うきうきした気分で家に帰ると、
「おかえりなさい、真美! 」
“全部わかっているよ! ”、そんな顔でウイリーが待っていました。
「どう真美! また良いことが起きただろう? 」
「えっ!・・・由美さんがお友達になってくれたこと?・・・ウイリーってなんでもお見通しなのね?」
「僕をだれだと思ってるの? ようせいだよ! 」
ウイリーはいたずらっぽく笑いました。
「ところで真美、お願いがあるんだ! 」
ウイリーは急にまじめな顔になると、そういいました。
「お願いってなに? 」
「このチューリップの花を、そのスケッチブックに書いてほしいんだ! 」
「そんなこと・・いいわよ! 私もこのチューリップの絵を書きたいと思っていたところなんだから・・・。」
「ありがとう、真美!」
ウイリーはうれしそうにいいましたが、なぜかその笑顔には元気がありませんでした。