そんなある日、真美はお花係になりました。
たんにんの原口先生が、チュウリップのきゅうこんを真美にわたして、こういいました。
「この10個のきゅうこん、全部花だんに植えてちょうだいね! 」
チュウリップの花が大好きだっ真美は、うれしくて飛び上がりそうになりました。でも、その気持ちを正直に表すことができないのが今の真美です。だまったまま先生からきゅうこんを受け取ると、さっそく裏庭の花だん畑にきゅうこんを植えに行きました。
真美はきゅうこんを植えなら、ママの誕生日にチューリップのはち植えを3つも抱えて帰ってきたパパのことを思い出していました。
「バカね!、こんな重いはち植三っも買ってきちゃって!」
「でもお前、切り花より、はち植えのほうが長持ちするだろう! 」
「それはそうだけど・・・」
そういいあいながら、楽しそうにはち植えを見ていたパパとママ・・・。
"あのころは、あんなに仲よかったのに、どうしてパパは家を出て行っちゃったの?・・・パパ! 早く帰ってきて!・・・"
赤に、黄色に、白に、ピンク・・・
この10個のきゅうこん達は、どんな色の花を咲かせるのだろう? 真美はワクワクしながら、きゅうこんを植えていきました。
楽しい時間は早くすぎるもので、あっという間に9個のきゅうこんを植えおわりました。残ったのは変な形をしたきゅうこん1個だけ・・・。
「何これ!、変な形・・・!?」
真美はこのきゅうこんが、とても気になりだしました。このきゅうこんは、いったいどんな色の花を咲かせるのだろう? そう思うと真美は、急にこのきゅうこんがほしくなりました。
「この10個のきゅうこん、全部花だんに植えてちょうだいね! 」そんな原口先生の言葉を思い出しましたが、真美は自分の気持ちをおさえることができませんでした。
“見たいのよ。どんな色のチューリップの花を咲かせるのか。そして、きれいに咲いたチューリップのお花を、ママにも見せてあげたいの。ひとつだけだわ。いいでしょ、これくらい!・・・。”
真美はそう自分にいい聞かせると、きゅうこんを制服のポケットにそっと入れたのでした。